権利は義務を全うしなければ与えられない、と言う前時代的な発想からさっさと脱却するべきだった。
すこしづつだが纏まってきた。


古典美術から現代美術に急激にシフトした最大の要因は、写真の発明であった。
それまで、美術業界の実利的な側面を担っていた「肖像画」が写真の為にほぼ絶滅に追い込まれ、
今となっては、わざわざ肖像画を描いてもらうなんて一部の好事家だけだろう。
単に自分の姿を写し取ってもらいたいなら、写真の方がずっと早くて綺麗で正確でしかも安い。
でも、逆説的に言うと、今でも肖像画は残っている。
趣味人が肖像画を描くって言うのは、それなりにある事だ。
現代美術へのシフト以降、ピンキリっつーかカオスな世界が演出されたのは、実際のところそれまで美術の世界を縛っていた実利的な側面が開放されたからじゃないか、と思わないでもない。
自分は芸術志向*1には常に反対しているので、商業分野消滅の流れを批判する資格は無いように思える。
やっぱ思い返してみたら、只の権威主義だよねー、それ俺が一番嫌いなものだよねー、ってことで。
歴史を翻れば、業界が消滅しかねない大変動以降も実はそれなりに作家が作家を続ける道筋は見えていたわけで、
初音ミクが既に1ジャンルとして成立している以上、ニコニコ世代が旧来のそれと比べ不合理な存在になるとは思わない。
当時の写真が、今のニコニコ動画に対応していると考えれば良い。
適応できる奴はもう適応し始めているし、実際にコンテンツ業界が消滅したとしても、業界人の大抵は上手い事生き延びていくと思われる。
奴らが口にそろえて言うのは「人付き合い」「人間性」「常識」*2だからな、要するに俺ルールに適応しろと言う意味だ。
奴らが本当に新入りに求めているものを持っているっつーなら、ちゃんと生き残るだろ。
絶滅しやがったら指差して嘲笑う予定、いつも言っているけれど俺はグラヴィオンが大嫌いなのです。
人でないものが人間になることは美談じゃないよ。
まぁ、若干の怨念が篭った未来予想図は兎も角として、エロ方面で言えば別にエロ画像が消滅する訳じゃない以上問題はない。
児ポ法とは違う。
エロゲと言うスタイルの消滅と、エロ画像の消滅、表現の自由の制限はイコールではない。
とりあえず自分の希望に沿ったエロ画像が収拾できるツテがあるのなら、必ずしも金銭の対価を求める必要は無い。
ただ、そうなったとしても、たぶん自分はエウには金を払い続けるだろう、信者とはそういうものだ。
さておき、今のような形態が取れないだけで、コンテンツの供給方法は幾らでも考え出せるのではないか。
実際、同人業界という、クリエイティブな分野はそれ専門の人間に依存する必要は無いことを証明するものもある。
同人で成功を収めているのは大抵業界人じゃない?確かに。
それは単に経験値というかレベルが違うからだ、出来レースに近い状況に持っていけているから勝てているのであって、
プロデュース能力のある誰かが気まぐれに、一見使えなさそうに見える素人を引き立ててやれば、勝率10割とは言わないが良い勝負は出来ると踏んでいる。
ぶっちゃけ、芽が出ない奴は才能が無い100%と思ってはいけない。
教え方を変えれば化ける人間って、結構いるぜ?
実際月姫ひぐらしも成功した、一つのコンテンツになりあがったのだ。
というか武内さんは未だに叩かれるけど、順当にスキルアップした一人だと思うんだ。


問題は、適応できない程度に不器用な人間をどうするか、と言う事。
落ちこぼれをどうやって受け止めるかが課題なんであって、今のシステムが変化する事自体は看過されるべきなんだろう。


それはそれとして、俺自身は未だにニコニコ動画を受け入れるつもりにはなれない。
第一にお互いがお互いに監視しあっている、と言う環境が凄まじく気に入らない。
俺は静かにコーヒーでも飲みながら動画を見たいのだ。
常に仕切りをおく必要は無いにせよ、その逆もまた不可だ。
自分が何を見ているのかいちいち調べられて寸評出されるのは気味悪いったらありゃしない。


具体的な未来予想図としては、趣味人が競ってフリーのツールやらなんやらで小〜中規模なフリーゲームを製作する状況になると思っている。
それでときたま大規模なクリエイター集団が、無駄に豪勢なフリーゲームを作って一世を風靡したりするんじゃないかな、と思う。
質的な面で言えば、現在のそれよりは劣る、なんていうのはたぶん今の世代の傲慢だ。
古典美術は常に於いて現代美術に勝る、ボッティチェリは、ドラクロワは、レンブラントは、絶対にシュルレアリストに勝っている、と宣言するのに等しかろう。
そのコンテンツを受け止めている側が楽しんでいるかどうかが問題なんであって、楽しめない側がやたらとケチをつけるのはよろしくない態度だ。

*1:つまり自分の作品が、もっと言えばコンテンツの一部或いは業界全体が芸術として認められることを要求する事

*2:でも俺は、こう言う事を恥ずかしげもなく言う奴を何があっても許さない。