狂気とはかく在るべきかの話


ありえません


つーか、さ、俺はこのサイトを開催してからさほど経っていない時期に。
「「ヤンデレ」なるタイトルのADVが出ては手に目も当てられない、ナンセンスなギャグである」とかなんとか言っていたような気がするのですよね、よね。
まさかあの時言った言葉が、そのままの形となって具現化するとは思っても見ませんでした。
苦節1年、ようやく僕は、ヤンデレと言う言葉から卒業する日が来たようです・・・。
愛するのは人のサガ、求めるのは美しい狂気、魂が黒ければそれで良い。


つー訳でヤンデレがいかに「使えない」かの話。
ヤンデレと言う言葉をそもそも明確に意義付ける事自体が不可能に近いとはいえ、黒楓様といえば大体イメージは伝わる訳ですが。
良いですか?、しゃっほーアニメ版開始時、あのような展開は誰も予測していなかったのです。
空鍋がどれほど恐怖を煽る演出家、あの時我々は知る由も無かったし、ましてやラブコメADVの極地たるしゃっほーでそんな事あるはず無いというか、可能性を考慮さえしていなかったと思います。
だからこそインパクトがあった訳で。
ヤンデレの欠点その1、シナリオに関わる面積が広すぎる。
ツンデレは、定義の曖昧さが逆に上手く作用してくれて、ツンデレというキャラ付けとシナリオの干渉する比率が少ない。
なのはStSでティアナに劣等生としてのコンプレックスを抱かせる事も可能ならば、逆にスバルのサポート役に徹する事も可能な訳で、同一キャラであっても多少の調整によって主役〜脇役、シナリオの性質の変容など自由度自体はかなり高く確保できる。
対してヤンデレは、過程、定義はどうあれ「発狂」は最低条件なので、どういう話に持ってこようとも発狂は必ず通らなければならない。
あと過度な「デレ」を演出する必要性もあって、どうしても恋愛話がべたべたしすぎるきらいになる。
士郎とセイバーみたいにさっぱりした繋がり方、愛情より友愛の話が、性質上どうしても出来ないのですわ。
その他出来ない事は多々あり、大人のビターな恋愛話も努力熱血根性のスポコンも出来ないよねー・・・。
つまりシナリオに対する「縛り」が強い訳ですなー。
この時点ではっきり言ってワンパターンというか、シナリオの内容が透けて見えるっつーか。
それでもって欠点その2、存在自体がネタバレ。
ぶっちゃけ推理小説の冒頭で「コイツが犯人です」と提示するようなものです、驚きも何もありません。
ヒロイン紹介に「ヤンデレ」とでも表記した日には、「ああ、コイツ発狂するのね」と判明してしまいます。
裏をかくなら発狂しないヤンデレくらいしかありません、おい、それってエロの無いエロゲー並みの矛盾だな!
んで、第3にして最大の欠点、醒める。
まぁ、要するにカッターナイフやら鋸やら鉈やらを振り回している女子だらけの世界を俯瞰的に見つめて、
果たしてそこに恐怖(萌え要素でも何でも良い)などという殊勝な代物があるのか、と言う話。
狂人だらけの世界などと仰いますが、狂気というものは正常とのコントラストで始めて認識できるものなのです。
狂気が支配する世界?、違います、我々が持つ「正常」とは齟齬のある「正常」な世界があるだけです、狂人とは基本的に圧倒的少数なのです。
古代ケルトでは生贄にされる事は「最上級の名誉」でした。
今考えると冗談ではないのですが、彼らの考えでは生贄にされる=神の元に召される、であったので。
まー、だから正常と狂気なんてモノはそれそのものが相対的なものに過ぎず、白一色でも黒一色でも歪なものに過ぎない。
随分長ったらしく話しましたが、纏めると。

    1. ヤンデレである事をあらかじめ明記するとネタバレする
    2. ネタバレしているので空鍋級の演出を組み込めても醒めるしかない、「ああ、やっぱりね。」って感じで。
    3. その上複数人配置するとシナリオの性質が似たり寄ったりな上ヒロイン自身の性質も近づいてしまうので差別化が図りにくい。
    4. 要するにADVの利点であるマルチエンディングの手法が全く以って意味を成していない。
    5. そもそも狂人ばかりの世界だと醒めるぜよ。


だからあれです、メジャーに対してはそんなに本気になれなくても、
ニッチなキャラのエロ同人は血眼になって探すのと同じ理屈です。(俺だけの話)
数が多いと相対的に価値が下がるのです、ツンデレにしてもそうですが、大量消費される事はそれだけ「安く」なる事なのです。
だからこその大衆文化でもあるし一概に悪いとは言えないのですが、
ヤンデレの「ヤン」とか「デレ」って何よ?、と極めてどうでも良い事を議論する前にまず自分の願望の果てにあるものが果たして本当に面白いものなのかどうかを考えましょう。
「ファンの期待に応えて」というキャッチフレーズやらネットの盛り上がりを受けた期待作が一転して駄作扱いなんて、よくある事なのですから。
まー始まる前からつまんねー言うのは主義に反しますが、期待するべき要素が一つも無いなんて・・・。
俺透子さんに心の傷を癒してもらうよ!、最強の幼馴染には誰も勝てない、それが今日の結論。